不器っちょな鳥さんへ◇
毛糸の帽子がほしい季節になってきました。
あったかくて、一度かぶり始めたら、
手放せなくなる帽子です。
そんな、愛着ある帽子を失くしてしまったら…
◇
「 白い帽子 」
白い帽子、
あったかい帽子、
惜しい帽子。
でも、もういいの、
失くしたものは、
失くしたものよ。
けれど、帽子よ、
お願いだから、
溝やなんぞに落ちないで、
どこぞの、高い木の枝に、
ちょいとしなよくかかってね、
私みたいに、不器っちょで、
よう巣をかけぬかわいそな鳥の、
あったかい、いい巣になっておやり。
白い帽子、
毛糸の帽子。
金子みすゞ
「 白い帽子 」
白い帽子、
あったかい帽子、
惜しい帽子。
でも、もういいの、
失くしたものは、
失くしたものよ。
けれど、帽子よ、
お願いだから、
溝やなんぞに落ちないで、
どこぞの、高い木の枝に、
ちょいとしなよくかかってね、
私みたいに、不器っちょで、
よう巣をかけぬかわいそな鳥の、
あったかい、いい巣になっておやり。
白い帽子、
毛糸の帽子。
金子みすゞ
ちょっと詩のリズム的には、もたつき観がある詩なんですが、
それも素朴に感じるといいましょうか。
この詩の中の少女の、あるいはみすゞの心がきれいなので、
この詩の温かみというのに繋がって、
味わいのあるものになっていると思うのです。
お気に入りの、失くすには惜しい、白い毛糸の帽子を失くしてしまって、
「失くしたものは失くしたものよ」と割り切ろうとするのですが、
どうせなら、溝なんかに落ちないで、
かわいそうな鳥の巣になってあげて、と願うという、
とても、かわいらしい、いじらしい思い…。
私みたいに不器用で、自分で巣も上手に作れないかわいそうな小鳥に、
せめて温かい巣を提供してあげてほしい。
そうだと想像すれば、失くしたことも諦めがつくのに…。
彼女は、不器っちょで、自分で何もできない、
そんなちっぽけな存在と感じていたのでしょうか。
写真は:安曇野 大王わさび農場 エナガ
by (C)ひでわくさん
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無断転用はご容赦願います
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