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2013年08月16日

死しても残るものとは、道義・誠・まごころ?! 「収容所からの遺書」


煌めきの朝。


君達はどんなに辛い日があろうとも、
どこまでも真面目な、
人道に基く自由、博愛、
幸福、正義の道を進んでくれ。


山本幡男



昨日は終戦の日。「奇跡体験!アンビリバボー」で、シベリアからの遺書について取り上げられていました。
あの頃の心ある人たちの思いは、素晴らしいものがあると改めて思います。

かつてシベリアに抑留され、そこで亡くなった山本幡男さん。その遺書というのは、7名の友人たちが、ソ連の厳しい検問の中、ある者は暗記し、ある者は書き写しを股下に隠し、命懸けで故郷に持ち帰ったものだということです。

シベリア抑留では6万人もの犠牲者が出たといわれています。今も、中国や北朝鮮の収容所のニュースなどを通し、当時のシベリヤの惨い状況を垣間見ることができるかと思います。*下記




子供等(ら)へ。 
君たちに会えずに死ぬることが一番悲しい。

成長した姿が、写真ではなく、実際に一目見たかった。お母さんよりも、モジミ(妻)よりも、私の夢には君たちの姿が多く現れた。それも幼かった日の姿で……ああ何という可愛い子供の時代!

君たちを幸福にするために、一日も早く帰国したいと思っていたが、とうとう永久に別れねばならなくなったことは、何といっても残念だ。第一、君たちに対してまことにすまないと思う。

さて、君たちは、これから人生の荒波と戦って生きてゆくのだが、君たちはどんな辛い日があろうとも光輝ある日本民族の一人として生まれたことを感謝することを忘れてはならぬ。日本民族こそは将来、東洋、西洋の文化を融合する唯一の媒介者、東洋のすぐれたる道義の文化――人道主義を以て世界文化再建に寄与し得る唯一の民族である。この歴史的使命を片時も忘れてはならぬ。

また君達はどんなに辛い日があらうとも、人類の文化創造に参加し、人類の幸福を増進するという進歩的な思想を忘れてはならぬ。偏頗(ぱ)で矯激な思想に迷ってはならぬ。どこまでも真面目な、人道に基く自由、博愛、幸福、正義の道を進んでくれ。

最後に勝つものは道義であり、誠であり、まごころである。友達と交際する場合にも、社会的に活動する場合にも、生活のあらゆる部面において、この言葉を忘れてはならぬぞ。

人の世話にはつとめてならず、人に対する世話は進んでせよ。但し、無意味な虚栄はよせ。人間は結局自分ひとりの他に頼るべきものが無い――という覚悟で、強い能力のある人間になれ。自分を鍛えて行け! 精神も肉体も鍛えて、健康にすることだ。強くなれ。自覚ある立派な人間になれ。

四人の子供達よ。
お互いに団結し、協力せよ!
自分の才能にうぬぼれてはいけない。学と真理の道においては、徹頭徹尾敬虔でなくてはならぬ。立身出世など、どうでもいい。自分で自分を偉くすれば、君らが博士や大臣を求めなくても、博士や大臣の方が君等の方へやってくることは必定だ。要は自己完成! しかし浮世の生活のためには、いたしかたなしである程度打算や功利もやむを得ない。度を越してはいかぬぞ。最後に勝つものは道義だぞ。
君らが立派に成長してゆくであろうことを思いつつ、私は満足して死んでゆく。どうか健康に幸福に生きてくれ。長生きしておくれ。
  
  
一九五四年七月二日           山本幡男


(現代かな使いに、
また当て字などは平仮名にするなど
読みやすく編集しました。)


山本さんの遺書は、「本文」「お母さんへ」「妻へ」そして、今日紹介した「子供等へ」です。
辺見じゅんさんの『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』というノンフィクションの作品で、山本さんの生き様が描かれているということです。
この遺書を見るだけで、4人のお子さんたちは、さぞかし立派な人に成長されたことだろうと、目に見えるようです。
きっと、美しい日本の財産となるのは、こういう貴いものを相続した人たちだと思います。

終戦後10年間も続いたシベリアの収容所生活の末に、山本幡男さんは、日本の地を再び踏むことはできませんでした。45歳という惜しい命を終えなければなりませんでした。
しかし、この遺書に込められた思いというのは、今も変わらず念となって残り、日本の地に向かっているのではないかと思うのです。

最後に勝つものは道義であり、
誠であり、まごころである。


山本幡男




今日もいい一日を

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写真は:煌めきの朝。
by (C)芥川千景(漂流中)さん
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