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2013年01月24日

電車ホーム、危機一髪の救出劇?! 大正時代の日本人の美談 + 《スペインのニュース》


虹色電車がやってくる。






新大久保駅乗客転落事故で、日本人と韓国人の男性が救助しようとして共に犠牲となったことは、多くの人に衝撃を与えました。日本では、それ以降、「列車非常停止ボタン」の設置など対策も様々にはされているようです。
しかし、その前も後も、自殺も含めて同じような事故はなくなっていません。

そんな中、危機一髪の救出劇のニュースを聞けば、胸をなでおろします。よかったと。

今回のスペインのニュースと共に、昨年9月の女子高生救出というエピソードも印象に新しいですね。
救出しようとした時、
──ホームの向こうから迫る電車のライトを見て
「十秒ある」ととっさに考えた
──考える間もなく体が動いた 助けたい一心だった
という二人の男性のコメントです。

「列車非常停止ボタン」を押すように二人は叫んでホームに降りましたが、とはいえ、電車がすぐに止まるものではありません。本当に危機一髪だったようです。
昨年11月、表彰を受けた際、この男性は、とにかく(救助した人も含め)3人とも助かったのがよかったというコメントをしています。
本当です。

ホームドアの設置を呼びかける人もいます。確かにそうですね。ただ、お金がかかりすぎるということで、なかなか普及は難しいようです。



さて、命懸けの美談ではありませんが、日本人がまだ海外にそれほど多くは行っていなかっただろう1920年にパリで実際にあった一人の日本人の話を紹介します。(マドリードではなく、パリでのお話です。)

 
「 一日本人 」


「なんだ。なんだ」
「どうしたんだ。どうしたんだ」
口々にさけびながら、バスティーユのひろ場のほうへ、人々が飛んで行きました。じりじりと日の照りつける広い往来には、たちまち、黒やまのような人だかりができました。
人がきのなかには、荷物を山のように積んだ荷馬車が、動かずにつっ立っていました。しかし、みんながかけつけたのは、もちろん、荷馬車がめずらしいからではありません。荷馬車をひいてきた馬がおなかを見せたまま、道ばたに倒れてしまったからです。おなかには、あぶら汗がいっぱいにじんで、黄いろく光っていました。
馬は、暑さでつかれているところへ、舗道に水がまいてあったために、ひづめをすべらして、ころんだのです。
御者はいうまでもなく、そこへ集まったひとたちもなんとかして馬を立てさせてやろうといろいろ骨を折りました。馬も立ちあがろうと、もがきました。しかし、鉄のひづめが、舗道の表面をななめにこするばかりで、どうしても立ちあがることができませんでした。そのうちに、馬のおなかは次第にはげしく波をうちはじめました。こまりきった御者は、手のつけようがないという顔で、馬の腹を見おろしながら、ため息をついていました。
その時、顔の黄色い、あまり背の高くない、ひとりの紳士が人がきの中からつかつかと出てきました。かれは、いきなり自分のうわぎをぬいで、それを馬の足へしきました。それから、みぎ手でたてがみをつかみ、ひだり手で馬のタヅナをにぎりました。
「それっ!」
 かれはからだに似あわない、大きな、かけ声をかけました。それははっきりとした日本語でした。
 馬はぶるっと胴ぶるいをして、ひと息に立ちあがりました。上着ですべりがとめてあったために、まえ足にぎゅっと力がはいったからです。
 見物のなかには、思わず「あっ」と声をもらす人もありました。
 御者は非常に喜んで、いくたびか、その黄いろい顔の紳士にお礼をいいました。だが、紳士は「ノン、ノン」(いいえ、いいえ)と軽く答えながら、手ばやくうわぎを拾い上げました。そしてどろをはらってそれを着ると、どこともなく、姿を消してしまいました。
 このことは、すぐパリの新聞に出ました。いや、それはフランスだけではありません。イギリスの新聞、イブニング・スタンダードにまで掲載されました。(1921年6月30日の分)そればかりではありません。イギリスで出版された逸話の本のなかにも、「日本人と馬」という題でのせられています。
 この人の名まえは、おしいことに、今では、もうわかりません。


山本有三「心に太陽を持て」より


「心に太陽を持て」は、70年以上前、戦前に書かれたものであって、少年少女向けに物語風に書かれていますが、ほとんどすべてノンフィクションです。
小話のような話から、いろんな心に残る話を紹介してくれています。こういう本が今もあればいいなぁという、子どもの心に残る名品で、もちろん、現代にもそのまま通じるものかと思います。

この、「一日本人」というのは、大正10年のちょっとしたエピソードです。日本人の男性が、さっと機転を利かせて人助け(馬助け?)をしたというお話です。背も高くなくカッコよくはない日本人が、かっこよく見えますよね。

なかなかとっさに機転を利かせるのはできることではありません。
いいことはそっと名乗らずにするのが、より徳の深いこと。これは陰徳につながる行為ではないでしょうか。



上のスペインのニュースをある新聞の読者はこう言っています。
「自分の命を危険にさらしても他人を助けようという、心の広い人がいることを教えてくれた警察官に感謝したい。今の厳しく、悲しい時代にあって大きな慰めになる話だ」

列車のホームに人が転落した時、助けられる人はなかなかいません。きっと、そういうことがあっても私は何もできないかもしれません。
今、この時から、こういう事故や犠牲者がこれ以上ないことを祈るばかりです。


今日もいい一日を

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写真は:虹色電車がやってくる。
by (C)芥川千景さん
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山本有三 「心に太陽を持て」 文庫本と単行本
 


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posted by kuri-ma at 11:40| Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする