「負ける」ということは、
自己主張をやめることです。
それから、
恥ずかしいことをさらけ出すことです。
◇
自己主張をやめることです。
それから、
恥ずかしいことをさらけ出すことです。
◇
相田みつをさんが生前講演をする時に、よく題としたのが「負けることの尊さ」だったといいます。その数々の講演のうちのひとつから抜粋します。
「負けることの尊さ」
何故そういう題をつけたかといいますと、誰だって負けたくはありませんね。ところが、わたし自身を振り返ってみても、理想に燃えて、努力をしても、世の中のことというのは、なかなか自分の思うようにならないんですね。皆さんだって、過去をふり帰ってみれば、決して自分の思い通りには生きて来られなかったと思うんです。
おそらく自分の息子さんや娘さん、あるいは嫁さんや婿さんのことが、百パーセント気にいっていて、最高に幸せだ、なんてことは、なかなかありませんね。そうじゃないことの方が多いんですね。人生は、勝って格好よく生きることよりも、負けて、恥をさらしたり、自分の思うようにならないことの方がはるかに多いのではないでしょうか。私自身がそうなんです。だから、私は、「負ける」ということを、いつも、題につけているんです。
「負ける」ということは、自分の思いを引っ込めること、自己主張をやめることです。相手に勝ちを譲ることですね。それから、恥ずかしいことをさらけ出すことです。山本周五郎という有名な作家の作品に『さぶ』というのがあります。その中に、
「ばかがいなけりゃ、利口がたたねえ」
という言葉があります。全部が利口じゃ困っちゃうんですよ。全部がお医者さんで、患者がいなかったら、困りますね。全部が先生で生徒がいなけりゃ学校なんて成り立たなくなっちゃいますね。
底辺を支える人がいて、初めてトップが生きるんです。だから世の中利口だけじゃダメなんですよ。負ける人がいるから、勝つ人がいるんですね。私はね、人間は、いつでも負ける方にいると、心が安らかだと思うんです。
今日の内容は
「いちずに一本道 いちずに一ツ事 」(角川文庫)
よりの抜粋です→