貝と月
紺屋(コウヤ)のかめに
つかって、
白い糸は紺になる。
青い海に
つかって、
白い貝はなぜ白い。
夕やけ空に
そまって、
白い雲は赤くなる。
紺の夜ぞらに
うかんで、
白い月はなぜ白い。
◇
紺屋(コウヤ)のかめに
つかって、
白い糸は紺になる。
青い海に
つかって、
白い貝はなぜ白い。
夕やけ空に
そまって、
白い雲は赤くなる。
紺の夜ぞらに
うかんで、
白い月はなぜ白い。
◇
白い糸が青く染まるように、白い雲が夕焼けに赤く染まるように、私たちの心は、周りの強烈なものに染まりやすいものです。
対照的に描いたのが、白い貝と白い月。
海の色にも、暗い夜の色にも染まらないその姿。
自然の中では、染まっていく姿もきれいですが、染まらない存在感も、きれいだし貴重に感じられます。
時にはすっぽり染まる、柔軟さもよいし、自分を貫く潔さも時には必要でしょう。
みすゞから見ると、貝や月の姿に羨望を感じたのかもしれません。
それは白くて美しいから、だけではなくて、周囲の暗い強い色に染まらない、それ自身の強さや自信を感じるからでしょう。
実はみすゞも、そんな孤高の存在感を示す人になりました。
素直な柔軟性、純粋さを保つこと、両方を求めるのは欲張りではないのではないか、とこのみすゞの詩を味わいながら、感じさせられました。